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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)340号 判決

控訴人 国民金融公庫

被控訴人 国

代理人 細田美知子 伊東敬一 ほか二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠関係については、左に付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二枚目裏六行目「払い渡した。」の次に、行をかえ次のとおり加える。

「恩給原簿は、恩給の支給事務を司る郵政省の基本台帳であり、かつ、その事務処理は正確を期することが必要であることから、恩給原簿も貯金事務センター(昭和五九年六月末日までは地方貯金局。以下「貯金事務センター」という。)で管理し、郵政大臣及びその委任を受けた貯金局長の定めた取扱手続に基づいて、給与金の払渡し等を記録しているものであつて、恩給原簿の記録内容は正確である。

甲第一号証の一の恩給原簿(写)は、その支給票発送欄に「四一・二・四昭和四〇年法律改正」と記載されていることから昭和四〇年法律第八二号による恩給法の改正に伴つて金沢貯金事務センターで昭和四一年一月下旬から同年二月四日までの間に作成されたことが明らかであり、備考欄に「公開四一・四期二・八」と記載されているのは、控訴人への恩給給与金の払渡しの開始期が昭和四一年四月期であり、これを記載した日が同年二月八日であることを意味するものであり、同日までに控訴人の千葉支店は担保として受給者渡辺から恩給証書の提出を受けているのであつて、右恩給原簿の昭和四一年一月渡欄に記載された差額九三六六円は控訴人に払い渡されている。

甲第一号証の二の恩給原簿(写)の備考欄の「公廃四二・七期七・二四」の記載は、金沢貯金事務センターが支給郵便局からこの恩給原簿にかかる担保権消滅届書の送付を受け入れたので、恩給証書の記号番号、控訴人受領の最終の支給期等に誤りがないことを確認したうえ、備考欄に控訴人へ恩給給与金を払い渡した終期が昭和四二年七月期であること及びこれを記載した日が同年七月二四日であることを意味するものである。また、右恩給原簿の昭和四二年七月渡欄の「四二・八・一二」の記載は、金沢貯金事務センターが昭和四二年七月渡しの三万八五六六円の受領証書を受け入れ、恩給原簿と対照して払渡金額等に誤りがなく、控訴人に払い渡されたことを確認して記載した日が昭和四二年八月一二日であることを意味するものである。

甲第一号証の三の恩給原簿(写)の備考欄の「四五年一二月七日担保権消滅一二・二五」の記載は、昭和四六年一月渡分の恩給給与金をその支給開始日に被控訴人が控訴人に払い渡したことによつて貸付金の弁済が完済となつたことに伴い、控訴人から昭和四五年一二月七日に担保権消滅届書の記載内容を確認のうえ、担保権の消滅を記載したのが昭和四五年一二月二五日であつたことを意味するのであり、昭和四六年一月渡しの恩給給与金は控訴人に払い渡されている。」

2  同三枚目表二行目「知らない。」の次に、行をかえ次のとおり加える。

「甲第一号証の一ないし三(恩給原簿写)を検討すると、控訴人の担保権設定届書が提出されたときの記載について、「公開四一・四期二・八」、「公開四一・四期」、「四五年一月九日担保設定一・二九」、「四六年五月一七日担保設定五・二八」などと記載され、場合によつて記載方法が異つている。同様に控訴人の担保権が消滅したときについての記載も、「公廃四二・七期七・二四」、「四五年一二月七日担保権消滅一二・二五」などとあり、昭和四六年五月一七日担保設定分についてはその記載がない等まちまちであつて、恩給原簿の記載方法について統一的な方式の定めはなかつたのであり、恩給原簿の読み方は一義的に定まるものとはいえない。

甲第一号証の一の恩給原簿(写)の備考欄には「公開四一・四期」の記載があり、控訴人が担保権を設定し払渡しを受けたのは昭和四一年四月期分の恩給からであつたことを読みとることができる。したがつて、同年一月分の九三六六円には控訴人の担保権の効力は及んでいなかつたのである。また、右恩給原簿によれば、右九三六六円と四月期分の支給金とは払渡月が異り、払渡手続が別個に行われたことが明らかである。以上の事実から、九三六六円は控訴人に払い渡されなかつたものと考えられる。

甲第一号証の二の恩給原簿(写)の備考欄には「公廃四二・七期七・二四」の記載があり、右記載は昭和四二年七月期分について控訴人の担保設定が廃止されたものと解される。「七・二四」は支給局における処理月日であるが、実際の担保権廃止は七月二四日より二〇日ないし一か月前と考えられる。同月期の恩給給与金払渡しの処理については「四二・八・一二」の記載があり、払渡しが担保権の廃止された後であつて、控訴人には払われていない可能性が強い。

昭和四六年一月期分についても同様のことがいえる。」

3  同三枚目表末行「い。」の次に、行をかえ次のとおり加える。

「恩給担保法成立前においては、貸主が借主である恩給受給者にかわつて恩給を代理受領し、これを貸金の弁済に充当する方法により恩給を担保的に利用することが行われていた。この方法では仮に裁定取消があつたとしても貸主には本件のような不当利得の問題は発生しない。しかし、かかる便宜的な方法によるときは担保として極めて不確実であり、闇金融の跛扈する原因ともなるため、貸主の担保権を強化しそれによつて闇金融を排除し、かつ、恩給受給者に金融の道を開くことを目的として恩給担保法が制定されたのである。被控訴人主張のように恩給支給裁定の取消によつて既往のものについて遡つて不当利得とされることになると、控訴人には予めそれを防止するような回収方法がないのにも拘らず結果としての負担だけを負わされるという不合理な結果となり、代理受領による貸付よりも恩給担保権の方が貸主である控訴人にとつて不利なことになり、右立法の目的に反することになる。」

4  同三枚目裏二行目「消滅」の次に、行をかえ次のとおり加える。

「担保権の基礎となる恩給受給権の存否、すなわち裁定取消の問題と貸金債権の弁済期は別個のものであり、裁定取消のときまで貸金債権の時効が進行しないとする根拠はない。貸金債権の時効の進行は当該貸金債権の弁済すべきものと予定されていた時から進行するものと解すべきである。」

5  同四枚目表一〇行目「る。」を「り、また、恩給支給裁定の過誤による不当な支出を控訴人からの回収によつて繕い、かえつて行政の責任の所在を曖昧にする弊害をもたらすことになる。」と改める。

6  同五枚目表六行目「なつている。」の次に、「控訴人は、全くの善意無過失で何ら責任を負うべき理由もないのに、同金額の損害を被ることになる。」を加える。

7  同五枚目裏二行目「権利濫用の主張は争う。」を、次のとおり改める。

「1 控訴人の消滅時効の主張は争う。控訴人の渡辺に対する貸金債権の消滅時効は、本件恩給裁定取消があるまでは右債権について法律上行使することができなかつたのであるから、右裁定取消の時から進行を開始するものというべきである。

2 権利濫用の主張は争う。」

8  証拠 <略>

理由

一  当審も、被控訴人の本訴請求は、これを正当として認容すべきものと判断するが、その理由については、左に付加、訂正するほか、原判決がその理由において説示するところと同一であるから、これを引用する。当審における新たな証拠調の結果によつても、引用にかかる原審の認定判断を左右することはできない。

1  現判決五枚目裏九行目「できる。」の次に、行をかえ次のとおり加える。

「<証拠略>によれば、恩給原簿への記載方法については、年金恩給取扱規程(昭和三六年一一月一三日公達第八七号)により定められていたところ、昭和四四年七月九日「年金恩給支給規則等の一部改正に伴う地方貯金局の取扱手続について」(依命通達郵貯二第四三号)によつてその方式が変更されたことが認められ、右依命通達の前後により記載方式に差異があることをもつて甲第一号証の一ないし三の記載内容が正確性を欠くものということはできず、また、甲第一号証の一の備考欄の「公開四一・四期二・八」、甲第一号証の二の備考欄の「公廃四二・七期七・二四」、昭和四二年七月渡欄の「四二・八・一二」、甲第一号証の三の備考欄の「四五年一二月七日担保権消滅一二・二五」の各記載は、いずれも被控訴人の主張する趣旨であることが認められ、これに反する控訴人の主張はその根拠も明らかでなく、採用することができない。

2  同七枚目表七行目「いうべきである。」の次に、行をかえ次のとおり加える。

「昭和二九年法律第九一号による恩給担保法の制定前においては、控訴人の恩給担保権は代理受領権の賦与という債権的構成によつていたため、債務者である恩給受給者がその受給権を放棄し、あるいは被控訴人から直接恩給給与金を受領したような場合には契約違反としてその責を追求しうるにすぎなかつたが、恩給担保法の制定により、担保権設定中は、控訴人だけが排他的に独自に恩給給与金の支払を受ける権利を有することとなり、恩給担保権が強化されたのであるから、例外的に本件のように恩給裁定が取り消されて不当利得返還債務を負うことがあるとしても、恩給担保法制定の立法目的に反するものとはいえない。

また、被控訴人は、恩給裁定が取り消された場合には、債権管理に関する関係法令に基づき当該恩給の給与金を受領した者に対してその給与金の返還を求め、その債権の回収を図ることが求められているのであつて、被控訴人から恩給給与金を受領した者が当該恩給の受領者であるか控訴人であるかによつて返還請求に消長を来すものではない。」

3  同八枚目表三行目「相当である。」の次に、「本件においても控訴人の渡辺に対する貸金債権の消滅時効は弁済期到来のときから進行する旨の控訴人の主張は、権利行使について右のような法律上の障害があつたことを無視するものであつて、採用することができない。」を加える。

4  同八枚目裏七行目「あつて、」から九行目「あるから」までを、「あるところ<証拠略>によれば、被控訴人は恩給担保法施行前から控訴人に担保に供されている恩給の受給権が消滅したこと等のため過誤払金が生じたときは、支給郵便局が控訴人の支所又は支店から過誤払金を徴収する旨の取扱いにしたがい、一貫して控訴人に過誤払金の返還請求をしてきたことが認められ、被控訴人の本訴請求が信義則に反し、あるいは権利の濫用にあたるものとは認められないから」と改める。

二  以上の次第で被控訴人の本訴請求は、これを正当として認容すべきであり、これと同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村修三 佐藤榮一 篠田省二)

【参考】第一審(東京地裁昭和五九年(ワ)第二八一一号 昭和六一年一月一八日判決)

主文

一 被告は、原告に対し、金五五万八七九二円を支払え。

二 訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一 請求の趣旨

主文同旨

二 請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張

一 請求原因

1 原告は、被告に対し、昭和四一年一月から昭和四六年七月にかけて、国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律(以下「恩給担保法」という。)三条一項に基づき、訴外渡邊成正(以下「渡邊」という。)が被告に対して被告からの借入金の担保に供した同人名義の普通恩給及び増加恩給のうち別紙担保に供した恩給一覧表記載のとおりの合計金五五万八七九二円(以下「本件恩給」という。)を払い渡した。

2 原告(総理府恩給局長)は、昭和五三年九月六日付け取消第三五七号をもつて、渡邊に対する恩給裁定を取り消した(以下「本件恩給裁定取消」という。)。

よつて、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、不当利得金五五万八七九二円の支払を求める。

二 請求原因に対する認否

請求原因1及び2の事実は知らない。

なお、本件のような恩給担保法に基づいて被告が恩給受給者に対して行う貸付(以下「恩給担保貸付」という。)は、恩給担保と金銭貸付が表裏一体をなしており、有効な恩給担保の設定がなされてはじめて貸付が実行され、また、貸付金の弁済も恩給の給与金をもつて充当することが予定されているものである。すなわち、恩給担保貸付は、その制度上金銭貸付と恩給の受領とが対価関係に立つ貸付形態なのであつて、そもそも被告に不当利得の生ずる余地はない。

三 抗弁

1 利得の不発生又は消滅

被告の渡邊に対する貸付債権は、別紙担保に供した恩給一覧表記載の本件恩給に対応して、遅くとも、同表昭和四一、四二年分については昭和五二年末までに、昭和四五、四六年分については昭和五六年末までに、各支払期日から一〇年を経過し、時効により消滅しているから、被告には何らの利得も現存しない。

2 権利濫用

(一) 恩給担保貸付制度は、恩給受給者の生活保障に関する国の施策の一環として特別立法(恩給担保法)により創設せられた制度であつて、これを維持していくことは公益上重要であるところ、恩給裁定取消によつて、原告の本件請求のように善意の第三者である被告に対する不当利得返還請求が許されることとなると、被告は、恩給担保貸付に消極的にならざるを得ず、借主に対する物的担保の徴求、恩給の給与金以外からの弁済の請求、貸付審査の厳格化とこれに伴う貸付拒否の増加若しくは貸付審査の長期化等が必然的に生じることとなり、却つて公共の利益が著しく損われることとなる。

(二) しかも、本件においては、次のような諸事情が存在する。

すなわち、本件恩給裁定取消は原告の恩給裁定に際しての誤判断に原因するところ、原告の渡邊に対する最初の恩給裁定から取消まで二〇年近い期間が経過しており、その間、再三審査請求がなされていたのであるから、原告においては、渡邊の恩給受給権の存否についてチエツクを行う機会が充分存在した。

これに対し、被告においては、原告のなした恩給裁定を適法なものと信頼して本件恩給担保貸付を実行し、本件恩給の給与金の受領をもつて右貸付金の弁済を了したものとして処理したのであるが、本件恩給裁定取消時には右処理後長期間を経過したため、右貸付及び担保設定等に関する書類は現存せず、貸付年月日、金額、連帯保証人の住所氏名等を究明することは困難となり、かつ、渡邊は現在無資力の状態であるから、渡邊及びその保証人から貸付金の回収を行うことは著しく困難となつている。

(三) 右のとおりの、恩給担保貸付制度の公共性及び本件における諸事情を勘案すると、原告は本件恩給裁定取消の効果を被告に主張しえないものというべきであり、原告の本訴請求は、信義則に反し、又は、権利濫用として、許されない。

四 抗弁に対する認否

権利濫用の主張は争う。

第三証拠 <略>

理由

一 請求原因1の事実は、<証拠略>により、また、同2の事実は、<証拠略>により、これを認めることができる。

しかして、被告の有する恩給の給与金の受領権限は、恩給受給者の恩給受給権にその基礎をおくものであるから、恩給の裁定が取り消されることにより恩給受給者が恩給受給権を遡つて喪失した場合においては、被告も、恩給担保法の規定に基づく恩給担保の設定によつて取得した恩給の給与金の受領権限を遡つて喪失することとなり、被告が右担保の設定にともなつて原告から払渡しを受けた恩給の給与金は、これを受領する法律上の原因のないものとして、被告の不当利得となるものというべきである。

被告は、恩給担保貸付においては、恩給の給与金をもつて貸付金の弁済に充てることが予定されており、右の予定のもとに貸付を実行しているのであるから、被告が恩給の給与金の払渡しを受け、のちに恩給受給権が遡つて消滅したとしても、被告には利得が生じないと主張する。

たしかに、恩給担保法三条二項によれば、恩給担保貸付においては、被告が恩給受給者から任意弁済を受けるのではなく、原則として担保に供された恩給の給与金を被告において払渡しを受けて、弁済に充当すべきものとされているから、被告による給与金の受領は、新規の利得というよりも予定どおりの出捐の回復といつた趣きがあることは否定できない。

しかしながら、被告が恩給担保貸付を実行した場合にも、恩給の給与金による出捐の回復は一〇〇パーセント確実であるわけではなく、給与金の払渡し前に恩給受給者が死亡したり恩給裁定が取り消されたりすることによつて、恩給受給者側からの任意弁済などにより出捐の回復を図るほかはない場合が生じうるのであつて、そのような場合の回収不能による危険が被告の負担であることはいうまでもない。それゆえ、被告の貸付による金銭の出捐と原告の給与金払渡しによる金銭の交付とは、各別の財貨の移動であり、財産状態の変動であるといわなければならず、被告主張の関連性を理由として被告の利得を否定することはできないというべきである。

二 抗弁1について判断する。

被告の右抗弁の意味するところは、本件恩給裁定取消により恩給給与金の払渡しによる弁済が無効となつたとした場合に、原告の本訴不当利得返還請求が成り立たない一方で被告の渡邊に対する貸金債権が復活して渡邊から弁済を受けるとすれば、被告は一個の出捐につき二重の回復を得ることになつて、利得を生ずることになるが、実際には、被告の渡邊に対する貸金債権は消滅時効期間の経過により満足を受けることのできないものとなつているから、被告には右のような利得は発生しないというのである。

ところで、本件恩給裁定取消によつて渡邊の恩給受給権及びこれを基礎とする被告の恩給担保権はいずれも遡つて消滅するものであり、その結果渡邊の被告に対する借受金債務も弁済がなかつたことになるから、被告の渡邊に対する貸金債権も取消前に遡つて復活するものといわなければならないが、被告の右貸金債権は、本件恩給裁定取消があるまでは法律上行使できなかつたものであり、右障害により右貸金債権の消滅時効は進行しなかつたものと解するのが相当である。

そうすると、被告の渡邊に対する貸金債権の消滅時効は、本件恩給裁定取消があつたときから進行を始めるものというべきであつて、右貸金債権が既に時効消滅したことを前提とする被告の右抗弁は理由がない。

三 抗弁2について判断するに、本件のごとき不当利得返還請求が容認されるとしても、被告主張のような恩給担保貸付拒否の増加等が必然的に生じ、公共の利益が著しく損なわれる結果となるものと軽々に断ずることはできないのみならず、そもそも、政府の金額出資による資本金により、あるいは無利息ないし低率の利息による政府からの借入金によつて、大蔵大臣の認可・監督・計画・指示のもとに、一般の金融機関から資金の融通を受けることが困難な国民大衆に事業資金等の供給を行うことを目的とする公法人である国民金融公庫は、私益を目的とする一般の私法人とは立場を異にし、国の行政目的の一端をになうものであつて、国に対する法律関係において取引上の善意や信義則を援用すべき地位にはないものというべきであるから、被告の権利濫用の抗弁は理由がない。

五 以上の事実及び判断によれば、本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 稲守孝夫 川勝隆之 黒津英明)

担保に供した恩給一覧表 <略>

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